子どもが勉強につまずく原因がわかるテスト
著者らが開発したのは2つのテストです。
一つは「ことばのたつじん」という言語力を測るテスト。
もう一つは「かず・かたち・かんがえるたつじん」という思考力を測るテストです。
これらのテストは、
学ぶ内容を理解するために必要な前提知識と認知能力をもっているかどうか、何が足りないのかを明らかにする
ことを目的に作成されました。
従来の習熟度テストではわかっているかわかっていないかまでしか判断できませんでしたが、たつじんテストではなぜつまずいているかまで判断することができます。
基礎的な知識や認知能力の全てを状況に合わせて最適に統合させることができるかを測っている
ため、その子どもがなぜつまずいているのかを明らかにすることができます。
子どもが勉強でつまずく理由
誤ったスキーマをもっている
スキーマとは
さまざまなモノやできごと、概念について人がもつ暗黙の知識
です。
人は自分がもっているスキーマを使って新しい知識を吸収します。
そのため間違ったスキーマをもっていると新しく教えられた知識を正しく理解できないということが起こります。
これにより勉強がわからなくなるのです。
分数が苦手な子どもが多いのは誤ったスキーマが原因です。
子どもが「数はモノを数えるときに使うもの」という誤ったスキーマをもっていると、任意の量を1として考えられないため、1を均等に2分割あるいは3分割した量が1/2や1/3であることが理解できなくなります。
分数以外の分野でも誤ったスキーマが原因で授業内容を正しく理解できないということが起こります。
推論が認知処理能力とかみあっていない
推論とは規則性やルールを見出して答えを予想する力です。
勉強につまずいている子どもは、同時に頭で処理しなければいけない事が多い状態で推論することができません。
たつじんテストに「はさみ→かみ」のように「切るもの→切られるもの」の関係にある物どうしを線でつなぐ問題があります。
選択肢の中には別の関係性の物が含まれています。
例えば「えんぴつ→かみ」などのような「書くもの→書かれるもの」のような関係です。
問題に正しく解答するためには「切るもの→切られるもの」の関係を探しながら、その関係に当てはまらないものを無視しなければいけません。
当てはまらないものを無視しながら正しい答えを見出す。
推論が認知処理能力とかみあっていないとこれができないのです。
つまずいている子どもをどうしたらいいか、つまずかせないために何ができるか
認知的負荷を軽減できる方法を自ら見いだせるように支援する
勉強につまずいている子どもは複数の情報を同時に処理しながら正しい答えを導き出すことが苦手です。
このような子どもに対する適切な支援は処理しなければいけない情報量を減らす工夫を教えることです。
例えば図形に補助線を引くです。
補助線を引くことで考えるポイントをしぼったり、問題をシンプルにしたりできます。
本のある家庭環境と読書習慣
著者らが行った保護者アンケートの結果からテスト結果と関連が強かったのが読書です。
なぜ読書をするとテストの結果が良くなるのか。
それは文字から言葉を学び語彙を広げられるからです。
勉強内容を理解するためには日常会話で使われる言葉以外のものも知っている必要があります。
読書を通じてそれらの言葉を学ぶことができます。
子どもが自ら関心をもって学ぶ環境づくり
テストの上位層の子どもに共通していたのは、就学前からひらがなや数に興味をもっていたことです。
重要なのは親が教えるのではなく子ども自らがひらがなや数に興味をもつことです。
自ら関心をもっていた子どもの方が親に教えられた子どもよりもテストの点数がいいという結果が出ています。
子どもが文字や数に興味をもつ環境を整えることが親にできる事です。
まとめ:子どもが勉強につまずく原因を理解し適切な支援を。
著者らが開発した「たつじんテスト」は子どもが勉強につまずいている原因を明らかにする事ができます。
その結果から子どもが勉強につまずく原因として、間違ったスキーマや推論が認知処理能力とかみあっていないことがわかりました。
原因には他にもさまざまなものがあります。
勉強が苦手な子どもへの適切な支援とは認知処理の負担を軽減する術を身につけさせることです。
補助線を引いくと問題をわかりやすくすることができるといったことを学ぶ必要があります。
また読書習慣を身につけたり数や文字への興味を引き出したりすることで勉強を得意できる可能性があります。
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