仕事、人間関係・・・いろいろな悩みの解決につながる本。東畑開人著「居るのはつらいよ」他2冊 

東畑開人3作品

朝日新聞の社会季評という連載で東畑開人さんを知りました。

働き手はモノやサービスを生み出す「手」でもあるけど、本質的にはそれぞれの人生を抱えた「人」である。

「徳が高い」とは・・・原則とは異なることが起きた時に、「そういうこともあるよね」と受け入れて、例外的な対応をしてくれること

(コラム「働き手不足があぶり出す「面倒見のいい」上司の孤立から引用)

 

それをきっかけに著書を3作読んだので、今回はをそれらをご紹介します。

マンガ版もあります。

居るのはつらいよ

居るのはつらいよ

内容

著者が大学院卒業後に就職した沖縄の精神科クリニックでの経験をもとに綴られた一冊。

クリニックで起きた出来事をとおしてクリニックに求められる役割とは何か、人をケアする仕事に存在する問題点について述べられています。

全9章で構成されており、すべての章が「ケアとセラピー」のように2つを対比するタイトルがつけられています。

その2つの違いやクリニックではどちらが必要とされているのかという内容になっています。

2つの比較を学術的な観点からだけでなく、クリニックのエピソードとともに語られているのでとてもわかりやすく、読みやすい一冊になっています。

感想

著者はセラピーをやりたくてクリニックに就職したそうです。

セラピーとは患者の不調を改善”する”ことを目指します。

しかし著者がクリニックで求められたのは”いる”ことでした。

何か”する”ことで貢献したいと思っていた著者はただ”いる”ことだけを求められたことに悩みます。

しかし徐々に”いる”ことの重要性を理解していきます。

本書を読んで、存在するだけで価値があるものもあるという考えに至りました。

そういうものに対して効率性や費用対効果を求めてしまうと、存在する価値が失われてしまいます。

なんでもかんでも効率化すればよいのではなく存在自体に価値があるものがあっていいと思います。

人生よよよさんのブログに次のように書かれていたのを思い出しました。

存在意義なんか無きゃないでいいんだよ

生きているから生きている以上の理由はなく、・・・

どいつもこいつも自分の人生に期待し過ぎなんですよ – セミリタイア老師 人生よよよのゆったり余生セミリタイアブログ 

心はどこへ消えた?

心はどこへ消えた?

内容

著者が週刊文春に連載していたコラムを再編集してまとめた一冊です。

コロナ禍での人々の心について書こうとしたところ連載早々にネタ切れしてしまったそう。

そこでとにかく人の心について書こうとしましたが、心が見つからないことに気がつきます。

心が見つからないとはその人特有のエピソードが見つからないということです。

人それぞれの事情や背景が見えなくなった理由は何か。

それについて考察して本書は締めくくられます。

感想

人それぞれの事情や背景に考えが及ばなくなっている。

本書を読んで感じたことです。

現代は効率性を強く求める風潮があります。

コスパ(コストパフォーマンス)やタイパ(タイムパフォーマンス)といった言葉を目にします。

そういったことが企業活動だけでなく個人の活動にも当てはめられてきています。

効率的に時間を使えているか、将来につながる行動をしているか。

このような考えが多勢の中では個々の事情は考慮されません。

しかしそんな個々の事情にこそその人らしさがあるのではないか。

人に対しても自分に対してもその人の事情を汲んであげたほうが生きやすくなるのではないかと思います。

なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない

なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない

内容

本書が新潮社のサイトで以下のように紹介されています。

僕がいつもカウンセリングルームでやっていることをあなたとやってみたい。・・・新感覚の“読むセラピー”。

『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』 東畑開人 | 新潮社 

「読むセラピー」のとおり、著者が読者に語りかけるような文体で書かれています。

生き方や人生、幸福などの悩みに対して補助線を引いて考えてはどうかと著者は言います。

補助線を引くことで複雑な悩みをシンプルにし、解決に導いてくれます。

感想

「小舟化する社会における幸福とは?」について考えさせられる一冊です。

小舟化とは大船(会社などの自分が所属している組織)から自由になる反面、自己責任を求められるようになることです。

今の社会は小舟化しています。

自己決定の機会が多くなり、さまざまなことで悩みます。

本書はそれらの悩みに対して補助線を引くことで、それを理解しやすくする。

どんな補助線を引けばいいのかを教えてくれます。

しかし補助線は分けることが目的ではないと著者は言います。

補助線はあくまでもわかりやすくするための道具で、悩みは全体で捉えなければならない。

悩みを小さく分割して、それぞれに対策をしても悩みの解決にはつながりません。

一つの悩みにはさまざまな要素が混ざっているので、それらのバランスをうまく取ることでしか解決することはできません。

白黒はっきりさせないこと、グレーゾーンの存在を認めることが大切だと思える一冊です。

まとめ:そこにあることを許すことで心にゆとりが生まれる

今の社会は効率性や合理性、透明性といったことが強く求められます。

そこでは個人の事情や背景は一切考慮されません。配慮されません。

「こういう事情があって・・・」というのは認められません。

そこに生きづらさを感じる人が多いのではないでしょうか。

「みんなできているのに、自分だけできない」と悩む人が多いのではないでしょうか。

「そういう人もいる」と考えることがそのような生きづらさや悩みを解決する助けになると思います。

そして効率性や合理性ではなく”いる”ことが尊重されれば、もっとゆとりのある生活ができるのではないかと思います。

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